テキストサイズ

僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

リビングでは、俺がいないあいだにノートにびっしりと数字を書きならべているアルがいた。
なにごとかわからないけど、そっとしておこう。

俺は、スマホを取りだして、今夜の最終連絡に勤しむ。

「…because i'm free nothing's worrying me」

またぶつぶつ言ってるよ…。
ん?

もしかしなくても、それってあの歌詞だな……。
そのメロディ、わかりにくっ。
盤若心経かと思ったぜ。
てか、それをわざわざ0と1に変換する意味がわからねぇ。

あああ、花野ちゃんは、伊織とその映画を観にいったはず。
そして、弾いているときは、きっと……伊織を思いだしてんだ……。

だから、泣いてたんだ…。
伊織に、会えなくて…寂しくて…不安で…。

アルが花野ちゃんに見たのは、伊織を想う涙……。

「よぉ、柊。この歌って、男らしい強がりだな」

ふと、アルが話しかけてきた。
それが2進数にまでバラした解読の結果か?

「雨が降っていないのに、さ。この歌詞になった意図は諸説あるだろうけど、俺は、降ってるんだと思うな。そして、ラスト、マジで降るんだ……」

「伏線ってこと?」

今の説明では、強がりにどうつながるのかわかんねぇ。

「さぁ?俺、作者でも評論家でもねぇし」

んな、投げやりな…。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ