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ダメビト図鑑

第5章 通勤途中で…

『あのぉ…』

イオリは駅員に

『やっぱり警察とかに通報しちゃうんですか? ……なんか気の毒になってきちゃって…。』
と切り出した


駅員は
『えっ?ダメですよ…。甘い顔をしたら…。こうして目撃者がいて、現行犯で取り押さえられたんだから…言い訳できないでしょ…。それに…あなたは被害者なんですよ……・』
と少しあきれた表情で
イオリにも事情を聞こうとした。


……私が今
あの男を痴漢だと告発したら
あの人の子供はどうなるんだろう…
30歳過ぎた大の男が
ああして涙ながらに後悔してるし…

満員電車のなかで
『この人、痴漢しました!』みたいに
腕まで掴まれて…
周囲からも軽蔑の目で見られたし…

あの人
根は悪いヒトでもなさそうだし…。


イオリは駅員に
『あのぉ。痴漢って申告罪ですよね?…あ、違ったっけ? …でも、私…泣き寝入りとかそんなんじゃなく、もういいかなぁって思うんですよ!それに私も出勤途中だし…。』


…結果。
イオリはそのひ弱な男性からの
謝罪を受けて
警察への通報を駅員に断ってもらった。


『男は、あ、あ、あり、あり、ありが、ありがとうございます!』と
額を床につけて土下座して
イオリに頭を下げ続けた。

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