
Everyday Love
第4章 You Belong With Me【青黄】
ジャスミンがデカルームへと出勤した途端、怒鳴り声が聞こえてきて思わず眉をひそめた。
そのまま真っ直ぐ目の前を見ればデカルームに1番早く来ていたホージーがSPライセンスではなく普通の携帯で誰かに連絡を取っている。
その顔からは苛立ちが感じられ、電話口からも金切り声が聞こえてきている。
ホージーが何かを言う度に金切り声は勢いを増し、我慢も限界らしい。
ホージーはチラッとジャスミンを見るとそそくさとデカルームを出ていった。
「ユーモアと余裕のない彼女さんだこと。」
ジャスミンの放った皮肉はホージーには届かなかった。
結局、ホージーが戻ってきたのは全員が集まる頃だった。
ホージーの彼女は我々と同じスペシャルポリスで地球生まれのとても美人でバリバリのキャリアウーマン。当然のごとく金バッチだそう。
テツは会ったことがあるらしく彼女の才色兼備振りを語ってくれたことがある。
しかしテツは話し終えたあと「まぁ…性格にめちゃくちゃ難があるんですけどね…」と聞こえるか聞こえないぐらいのトーンで呟いた。
あのテツが苦虫を噛み潰したような顔をしながら言うのだからきっと余程のことなのだろう。
それに最近よくあんな電話での会話を聞いている。
何度も心配の声をかけるジャスミンにホージーは「大丈夫だ」と言うが大丈夫じゃないことなんて分かっている。誤魔化せたつもりなのだろうか。
普段からあまり笑うことのないホージーの笑顔を最近はより一層見なくなった気がする。
何で自分を苦しめるそんな女性と付き合っているのだろうか。
自分より格上の相手にプライドの高いホージーは嫌になったりしないのだろうか。
何か弱みを握られていたりとか?とありえないことすら考えてしまう。
きっと彼女は一生、ホージーのことを理解できないと思う。
早く目を覚まして欲しい。
その点、ジャスミンはホージーのことが良くわかる。
バンやテツが入る前まではよくコンビを組み、しょっちゅう一緒に行動していたのだから。
でも、彼女は金バッチ。私は銀バッチ。
本部でバリバリ働く彼女とただの地球署職員の私。
どっちが魅力かと言われれば一目瞭然。
だとしてもホージーを笑わせて明るい気持ちにさせられるのは自分しかいないのにとジャスミンはやるせない気持ちになるのだった。
