幸せの欠片 *超* 番外編
第1章 プロローグ
「はは、大丈夫です。すいません…」
運転手さんにまで心配されるって、どんだけ酔ってたんだ俺
そりゃ確かに、今だってまだ素面とは間違っても言えないけれど
“ありがとうございます“ 軽く会釈をしてタクシーから降りる
さっきああ言われたのもあって、かなり慎重に足を進めた
やっぱりさすがに真っ直ぐ歩ける気はしなかった
時間が時間だから、足音に気を付けて階段を昇る
鍵も、なるべく音が出ないように静かに開けた
真っ暗な部屋は静まり返っている
ー…誰もいないんだから当たり前だと分かりきってるのに、何故か今日はやたらと寂しく感じる
何でかな
凄く寂しい。…恋しい
…ってさ、そんなの分かってるくせに
だから今日は飲みたかったくせに
だって明日は
忘れたくても忘れられない日
思い出したくなくても、記憶から消したらいけない日
けたたましいブレーキ音
目の前を舞うように飛んだ身体、コンクリートに叩きつけられた鈍い音
血濡れたまま、柔らかく微笑んだあの人の最期の顔
腕の中で力尽きた、愛して止まないあの人の
……命日
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