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無表情の宇野くん

第55章 田辺くん④。

田辺くんは陰が薄い。いじめられているわけではないのに、無視をされるほどの陰の薄さである。


偶に自分の影を確認していないと、自分ですら存在を認識できなくなるほど、陰が薄い。


しかし、彼にも友達はいる。


阿保という男なのだが、その男とは仲が良い。


しっかりとした認識をしてくれて遊んでくれる唯一の友達といっていい。


しかし、そんな彼でも、田辺くんの存在を認識できないことはある。


目の前でメールを送ったのに、遠くに居るように扱われた時は泣きそうになったものである。


後ろから肩を叩いて呼んだら、田辺くんの一歩後ろにいた別の友達と話していた時は、幽体離脱でもしたのではないかと思ったりもした。


今となってはいい思い出である。

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