幸せの欠片
第2章 再会
そこまで言われて、別れたくないなんて縋る気はない
「分かった。別れよう」
彼女に対して、何の反論もする事なくあっさりと受け入れた俺に
彼女は小さく溜め息を吐いた
「…そう言うとこよ。貴方は何も聞かないし、話さない
全部1人で解決させちゃう」
ああ、そうか
俺からしたら、彼女を困らせたくないから余計な事を言わないでいたのが
彼女に言わせればそうではなかっただけの事だ
だけど俺はそんな愛し方しか知らない
自分を晒け出す事は恥ずかしい事だと思っていた
多分この先も、それは変わらない
「話はそれだけ。…さよなら、今までありがとう」
注文したお気に入りの紅茶を、一口も口にする事なく
自分の分の代金を置いて静かに立ち上がる彼女を
俺はまるで他人事みたいな気持ちで見つめていた
1人テーブルに残されて、冷めてしまったコーヒーを口に含む
…あっけないもんだな
3年と言う長い年月を付き合っておきながら、別れる為の時間は一瞬だ
だけど特別悲しいと言う感情も湧かないまま
コーヒーを飲む俺は、何処か欠けているのかも知れない
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