幸せの欠片
第10章 いらない
おじさんがやくそくどおり、かんジュースを買ってくれた
「5分でいいから、目の上において」
「なんで?」
「腫れが少しでも引くから」
“さっき言っただろう“
ぼくにめをつぶるようにいったおまわりさんが、そのうえにジュースをおく
「つめたい!」
「我慢しろ。おとこだろ」
クスクスわらったおまわりさんが、となりにすわったのがわかった
「…そのまま、聞いてくれるかな」
ちょっと、おじさんのこえがかわる
あんまりうれしいはなしじゃないのかな
…なんだか、かなしそうにきこえる
「お母さんな、…もう起きないんだよ」
「え?」
「…亡くなった、って言って分かるかな?」
「しんじゃった…の?」
ー…やっぱりそうなんだ
おかあさんをみてるおとながいってた
あれだけあたまをうってたらむりだよって
ぼくのあたまのなかに、あざやかなあかがひろがる
おかあさんのつめとおんなじ、あか
おかあさんのかみのけのあいだから、いっぱいながれてた
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