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オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第13章 溢れる想い

「お幸せそうですことっ、まーくん」

「チッ ―― お前も、この沙奈ちゃんみたく
 少しは素直になりゃいいじゃん」

「私はいつだって素直よ」

「何処がさ。引く手も数多の鮫島にヤキモチ妬いて
 朝からずっとイラついてるくせにっ」


  久住に痛いところを図星され、一瞬言葉に詰まった
  絢音は、ジュワワ……と大きな瞳いっぱいに
  涙を滲ませ、教室から飛び出して行った。


「あちゃー……やっちまった」

「まーくん?」

「ハハハ……俺っていっつもひと言多いって
 言われんだよね……」

「だーいじょうぶー。まーくんの真意はきっと絢ちゃん
 にも届いてるよ」

「そっかぁ? そーだといいけど……」


 ***  ***  ***


  やって来た絢音がふと立ち止まり、
  おもむろにカバンの中から綺麗にラッピング
  されたギフトの小さな包みを取り出し、
  すぐ近くにあるゴミ箱に捨て、
  何事もなかったよう歩き去った。

  そのすぐ後、そこへ来た久住がゴミ箱から
  今絢音が捨てた包みを拾い上げる。


「食べ物は粗末にしちゃあダメでしょーがっ。ったく
 素直じゃねぇーんだから……」

「あー、いい事思いついた。ね、まーくん、ちょっと
 耳貸して」


  ゴニョゴニョ ―― 

  沙奈が久住に何やら耳打ちすると、
  久住は口角を少し上げ、何かを企んでいそうな
  笑みを浮かべた。

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