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笑い、滴り、装い、眠る。

第8章 花梨―唯一の恋―



准「……分かった。」



くしゃくしゃと俺の頭を撫でると、准一はシャツを羽織った。



准「そろそろ行くぞ?」


「どこへ?」


准「翔の…弟んとこ。お前のこと紹介するから。」


「あ…うん。」



いつの間にか、キチンと折り畳んであった服を着込んでいって、部屋から出ていく准一の後に続いた。





准「こいつが弟の翔。」



「ども…。」


翔「翔です。」



それまで参考書に向き合っていた彼は、ちゃんと椅子から立ち上がって俺に頭を下げた。



翔「ねぇ、兄貴。」


准「ん?」


翔「俺、大野さんと二人で話したいから外してくれない?」


准「あ………ああ。」



准一は一瞬、怪訝な顔をしたが、俺の肩をポンポンと叩くと大人しく部屋を出ていった。



翔「あの…大野さん。」


「えっ?は、はい?」



ボケッと、准一の背中を見ていたら、



童顔のわりには低くてハスキーな声に名前を呼ばれる。



翔「俺のこと……覚えてませんか?」


「は?」



どっかで会ってたっけ?



俺が難しい顔をすると彼は苦笑した。



翔「すみません。いきなり。そうですよね?いくらなんでも覚えてないですよね?十年以上前のことなんて?」



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