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原稿用紙でラブレター

第1章 原稿用紙でラブレター






電話越しに罵り合いながらも、なかなか胸の高鳴りが落ち着かない。



まさかこんな近くに味方がいたなんて。


今まで大ちゃんにしか打ち明けてなかったこの気持ち。


それを同じ目線で共有できる仲間がいたなんて。


…こんなに心強いことってないよね。



『お前知らねぇだろうけど松潤って意外と、』

「ねぇ翔ちゃん、」


段々とヒートアップしてきた翔ちゃんを遮りベッドから降りて机に近付く。


「俺さ…こんなの叶わない恋だってずっと思ってたんだよね。
…けどさ、そうじゃないかもって今は思うんだ」

『ぇ…それって、」

「うん、伝えようと思ってる。
ぶつけてみようかなって…」


机の上の原稿用紙を手に取り、真っさらなそれを見つめながら言葉を続けた。


「どうなるかなんて分かんないけどさ…
ただ、にのちゃんに気持ちを届けたいんだ」


この原稿用紙には収まりきれないくらいの、溢れ出しそうな俺の気持ちを。


「…翔ちゃんはどうするの?」

『えっ?いや俺は…』

「翔ちゃんも伝えようよ。
俺ね、今すっごい自信湧いてきてんの。
翔ちゃんも同じなんだって嬉しくて」

『うん、まぁ…正直びっくりしたけどな。
けど…うん、確かに心強いわ』


ははっと笑う翔ちゃんにつられて俺もふふっと笑みを溢す。


「よし!じゃあどっちが先に告れるか勝負しよ!」

『はぁ?なんだそれ』

「負けたほう卒業まで毎日ジュースおごり!」

『は?バッカ、ふざけんな!』


我ながらいい提案と思いつつ笑いながらベッドにボスっと腰掛ける。


『告んのに勝負とかなしだろ!』

「え?翔ちゃんもしかして自信ないの!?」

『…はぁ?あ、ありますー!あるに決まってますー!』

「ぐふふ!ならやってみやがれっ!」

「おいお兄!うるせぇぞ!」


足音と共にいきなり開いたドアから文句だけを吐き捨てられ、すぐにバン!と激しくドアが閉められて。


『…ふは、大丈夫か?』

「…ふふ、弟に怒られちゃった」


それから少しだけお互いの好きな人のことを話して、なんか妙に恥ずかしくなったから"続きはまた明日"と言って電話を切った。


改めて机に向かうとさっきよりは肩の力も抜けていて。


頭の中ににのちゃんの笑顔を浮かべながら、思いのままにペンを走らせた。

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