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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第25章 二人の部屋・・・

「こ…こんばんわ~?」



マリアとマンションに帰ると
共用玄関をくぐる前に
呼び止められるように挨拶がきた




『あ、こんばんわ…?』




不意討ち?に少し驚いきつつも
二人揃って会釈して
目を向けた先には



ご近所の奥さん…って感じの
中年女性がこちらをみていた



「お引越し?新婚さんかしら?」



感じ良く話しかけてくる主婦


本日二度目の新婚さん質問…(笑)




そう・・・見えるんだな




なんて



照れ臭ささや複雑さを隠しながら
答える




『ぁ…えぇ、まだ…なんですけど』



「うふふ…いいわねぇ若いって
お盆休みは二人きり?ふふふ」




『あ…まぁ、そうっすね
旅行もかねて…この辺下見したり』





「あらっ♪そうなの?!
いいわねぇ~この辺は結構
若い新婚さんにも住みやすくて人気よ」





『そのようですね…』




「ふふふ…あら、奥さん
もしかしてあそこの八百屋さん行った?」




『はい…美味しそうな野菜…
こんなに沢山・・・ふふふ
素敵なご夫婦の八百屋さんでした』




マリアがニコニコして
嬉しそうに答えた




「この辺のことなら何でも聞いてね♪」





『ありがとうございます、それじゃあ』

『失礼します』










マリアと揃って

俺たちの・・・城

二人の部屋に帰る






この空間の…空気は


最高にウマイ






『フゥ・・・なんか今日は
色々楽しかったね♪…』





野菜をしまいながら
マリアが呟いた





『確かにな(笑)』




その土地の人々や文化とふれ合って
少しずつ人間の輪が拡がっていくような感覚



こうしていると…段々と


そこに〃住んでいる〃と

自覚していくのかな…なんて思っていた





まさかのドタバタ劇な逃避行に始まり


行き着いた先で迎える


初めての夜だったかもしれない






自由になった訳じゃないんだ



俺らの地盤…足元はぐらぐらで

ちっとも固まっちゃいない



ただ甘い夢を見ている…

それだけかも知れない



そんなことも
どうでも良いくらい



一々楽しくて…一々幸せな




甘く・・・心地良い

真夏の夜

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