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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第23章 逃避行・・・

「嫁の…あー、元嫁の
浮気だったけどなぁ…」



『え?・・・先輩』



俺なんも聞いてねぇぞ?!(まだ)

聞きたくても聞けねぇ事ってあるしよ?!




でもそれは…突っ込んでもイイってサイン?
そう思った俺は






『…なのに先輩、子どもは
奥さんに渡したんですか???』





「浮気…ってもなぁ、なんだ
嫁の…俺に対する抗議…復讐みてぇなもんだ
…そう思ったからだぁな?」





『え…?』






『俺の思う幸せと、アイツの望む幸せは
ちがったってこったろぉ』






『でも…その事実があれば、先輩は・・・

その…訴え起こそうとか、慰謝料とか

思わなかったんですか?』






『ハハハっ・・・おぅ、篠宮ぁ~

相手のなぁ、幸せを願う事はあってもな

相手の不幸を願ったり…陥れる

それほどカッコわりぃことぁねぇよ』






例え、今の俺に
自分に都合の良い解釈だとしても

今の言葉を
どっかのペーパー旦那に
聞かせてやりたかった…




『相手の幸せ、相手を思って身を引く…
そういう事も必要なんだろうってな

あ~あとは、やっぱ
子どもから母親を取り上げるワケにゃ
いかなかったぜな…そんだけだ』





ズキン・・・


重みのある言葉だった


相手を思って身を引く…

俺にも十二分に言える

重い重い言葉だった





『・・・めちゃくちゃカッコいいっすね』




「ぶっ…~篠宮ぁ、ほざけ
なんもでねぇぞ♪焼鳥でも喰っとけ(笑)」







『めちゃくちゃ…カッコいいと思います』






「・・・」








『男らしくて・・・・・・人間らしい』







人間(ひと)なんて・・・

ただそこにいるだけじゃ

知ろうとしなければ

その人の本当なんかわからない



その人の生きてきた道…

その人の抱えるもの


内に秘めた想い・・・







俺はこの日

どこにでもいそうな、さえない

中年のオッサンが

めちゃくちゃカッコいいと思った

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