誰も見ないで
第16章 全部知りたいのに
「湊斗は一応進学なんだよね?」
その質問に、ちょっとドキッとする
「そう聞いてます」
「だよね。でもなんか、俺には進学先教えてくれないんだよ。瑞稀君は知ってる?」
正樹君も、知らない
そのことにほっとしたような、また更に不安になったような複雑な気持ちになった
「知らないんです。……なんだか人の進路って聞きにくくて」
「あーそうだよね。俺も人から根掘り葉掘り聞かれるのちょっと嫌だから」
ため息を吐くように放たれた言葉が、周囲の女の子の動きを一瞬止めた
魔法使いみたい
きっと自分の行動に何か思い当たる節があった人たちなんだろう
もしかしたらそれを見越しての正樹君からの牽制だったのかな
そんなことを考えながら
「大変そうですもんね」
労わりの言葉をかけると
「知りたい気持ちがわからないわけじゃないんだけどね」
と微笑まれた
女の子達へのフォローなのかも、と思ったけど
僕にはなんだか違う意味にも聞こえて、小さな声で
「……大和君の進学先なら教えられますよ?」
と言ってみた
すると
「……っ」
正樹君の顔が一瞬で耳まで真っ赤に染まった
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える