誰も見ないで
第14章 文化祭
「………………泣きそう」
そう呟いた俺の声は情けないほど震えていて、それでも瑞稀君は俺の頭を撫でた
「いいよ」
小さく、でもはっきりとそう言われると、俺の涙腺はすぐに決壊してしまう
立てた膝に自分の顔を埋めて、制服に吸い込ませるようにする
「……」
瑞稀君は黙って俺との距離を詰めてぴったりと寄り添ってくれた
くっついた身体が温かくて
真っ黒な心が少しずつ浄化されていくのを感じた
始業のチャイムはとっくに鳴ってて、それでも何も言わずに寄り添っていてくれた瑞稀君
俺はゆっくりと瑞稀君の方へ顔を向けた
「ん?」
瑞稀君はにっこりと微笑んでくれて
何も聞かずに顎を俺が膝の上で組んでいた腕に乗せるように近づいて来る
鼻と鼻が触れ合うような距離に少しドキドキした
「ふふふっ……」
そしてそんな距離でかわいい顔をまた更にかわいくする瑞稀君に、心臓がぎゅっと縮まるみたいに痛む
「ん……」
それを誤魔化すみたいに瑞稀君にちょん、と触れるだけのキスをした
びっくりした顔が
恥ずかしそうな笑みに変わって
瑞稀君から俺にも同じようにキスを返された
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