誰も見ないで
第14章 文化祭
俺の言い方に少し笑いを誘われたのか、くすくす笑い出した瑞稀君
その顔を見て俺も笑ったけど、その顔からすぐに今日の休み時間に女の子と話していた光景が浮かんだ
「ねぇ瑞稀君」
「なに?」
「今日小川さんと話してたけど、前から仲良かったの?」
小川さんと? と俺の言葉を反芻した瑞稀君は、すぐに「ううん」と首横に振る
「この前、文化祭の接客練習みたいのがあったでしょ? その時衣装の件でちょっと話したのが初めてだよ」
文化祭の練習って
あ……俺が木下さんと初めて会話した日だ
その時瑞稀君も初めて会話した人がいたってことか
小川さんは衣装係なのかな?
「そうなんだ。今日休み時間に話してたから、仲良かったのかなって思って」
そうじゃないなら良かった、なんて言葉が口から出そうになって飲み込む
けど、瑞稀君には俺の心の声が聞こえてたんじゃないかっていうようなことを言われた
「あれから仲良くなったの。文芸部ってだけあって色んな本読んでいて、趣味も合うし」
「……そう、なんだ」
でも俺と違って告白されたとかじゃないし、本当に友達ってだけだよね
そこまで考えて
というか俺に嫉妬する権利なんてない
と気がついた
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