誰も見ないで
第9章 何度でも好きになる
「……うん」
こう言う時、なんて声をかけたらいいのかわからない自分の経験不足が嫌になる
どうしたら瑞稀君に元気になってもらえる?
どうしたら
結局どれだけ考えても良い案はうかばなくて
俺は出来る限り優しく瑞稀君を抱き締めることしか出来ない
優しく
包み込むように
「でも……っ、今回は違って……っ」
瑞稀君の呼吸が早くなって来た
俺は手の平をしっかり当てるように意識しながら瑞稀君の背中を撫でる
すると少しは落ち着いてくれたみたいだった
「お父さん、何か薬……? を使って……僕の目の前で……男の人、と……っ」
けど、話を再開するとまた元に戻っていってしまう
どころか全身がガクガクと震え始めて
「瑞稀君、もういいよ」
俺は思わずそう声をかけた
もう、どんなことがあったのか想像は出来た
父さんと母さんの話で、瑞稀君のお父さんが使っていた薬物には強い催淫効果があるって聞いた
つまり、瑞稀君のお父さんはそれを使って瑞稀君の前でそういうことするのを楽しんでたってこと
実の親とも思えないあまりに酷い仕打ちに、俺は心の底から怒りが湧き上がってくるのを感じた
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