誰も見ないで
第8章 記憶
そして見た光景に、声が出るんじゃないかってぐらいにびっくりした
キスしてた
まっすぐ立つお兄ちゃんを覗き込むように顔を近づける正樹君の図が、焼きついたみたいに頭から離れない
やっぱり2人は付き合ってたんだ
ただの、仲がいい幼馴染じゃなかったんだ
膝から力が抜けてその場にしゃがみ込んだ
胸が痛い
すごく
息が、しづらい
「…………」
呆然とその場に蹲っていると
「こんなところで何してるの、瑞稀?」
後ろからお兄ちゃんが僕の名前を呼んで、慌てて忘れ物を届けに来たことを説明する
すると、僕が持って来たキーホルダーを見て
「それ、俺があげたやつなんだ。まだつけてたんだなって思って」
と笑った
その笑顔がすごく柔らかくて自然で、また僕の胸が痛んだ
僕は、そんな笑顔向けて貰えない
お兄ちゃんはいつも僕に遠慮してるみたいで
涙が出そうになったのを隠すように僕はお兄ちゃんよりも前を歩いた
でも本当なら僕には、こんなことを思う資格もない
だって僕たちは兄弟で、僕の思いが叶うことなんて今後絶対にありえないんだから
お母さんが作ってくれたハンバーグを美味しそうに食べるお兄ちゃんを見る
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