ガラスの靴がはけなくても
第2章 キスの温度
「いい加減にしてください!」
「あっ、やっと顔あげた。髪切ったんだな。可愛い。似合ってる」
ずるい。こんなタイミングで"可愛い"なんて言葉。
「部長!ふざけないで下さい」
「ふざけてるつもりはないんだけど?」
「ふざけてないならなんなんですか!」
勢いよく言い放ったつもりだったけど、やっぱりペースを握るのは余裕の表情を浮かべる部長。
騒いでるのは私だけ。
動揺をしてるのだって私だけ。
両手を壁につけた部長の間にいる私。
どんなに凄んだって不利なことに違いない。
「逃がさないようにするためだ」
なんで。
何でいきなりそんな真面目な顔をするのか私には分からない。
「分からないなら今は分からなくていい。俺が教えてやる」
「やめ――…っんん!」
何でキスするのか私にはやっぱり分からない。
ただ一つだけ分かるのは……
唇が合わさってもやっぱり嫌じゃないってこと。
だからこそそんな自分に嫌悪する。
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