僕は君を連れてゆく
第74章 今夜、君を
「先輩っ!」
タクシーのなかで俺の胸に体を預けたまま寝息をたてる先輩を起こす。
「う…んっ」
瞬きを数回繰り返しておもむろに立ち上がる。
「あっ、頭っ」
タクシーの中、というのを忘れていたのか後部座席にいたまま立ち上がろうとして、頭を思いきりぶつけていた。
「いてっ!!!」
気をつけてね、なんてタクシーの運転手まで笑いながら
言ってくる。
「大丈夫ですか?頭さげてください」
頭に手のひらをのせたまま、ぶつけないようにおりてもらう。
カードを運転手に渡し、支払いをする。
「ありがとうございました」
タクシーが走り出したのを見て先輩に視線を戻すといない。
「あれ?先輩?」
すぐ後ろにいたと思っていた先輩の姿がなくて、
辺りをキョロキョロとすると少し離れたところにある
自動販売機に寄りかかっている人が見えた。
近寄っていくと先輩だった。
吐いたのか?
「相葉…」
「大丈夫ですか?すぐそこなんで行きましょう」
歩けますか?と、聞けば頷いて歩き出した。
先に歩く俺についてきてくれてるけど、途中で転ぶんじゃないかと気になって。
うちに来ますか?と言った意味、わかってますか?
まだ、この信号を渡るとうちのマンションに続く。
ここならまだタクシーがつかまる。
「先輩、うちに来る意味わかってます?」
後ろについてくる先輩に問う。
先輩は驚いたのか、肩を揺らして頭をあげた。
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