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僕は君を連れてゆく

第64章 カモン ブルー SO

「これ、こっち」

「これもですか?」

「なんか文句あるか?」

「…ありません…」

頼まれたら嫌と言えない俺は、あれもこれもと頼まれて、一時間近く、松潤の手伝いをさせられてしまった。

「よし!ありがとな」

「いえ…でわ、失礼します」

職員室の時計をもう一度見て教室へ急いだ。

「はぁ…はぁ…」

息がきれるほど走った。

教室に近づいたら、笑い声がした。

この声は、智と女子だ。

モワっと何かが胸に広がる。

そっと、ドアの前に立つと教室の中から、女子と智のしゃべる声がする。

ゆっくりドアを開けたら、智の頭を女子が撫でていた。

くすぐってそうに首をすくめて、上目遣いで女子を見てる智が。

モワっと広がる何かは、全身に広がり俺を包んだ。


触んな―


「あっ!翔くん!」

「あっ!櫻井くん!松潤まだいた?」

「え?あぁ、職員室にいると思うよ」

「じゃぁ、行って来ようっと!またね、大野くん!櫻井くん!」

「またね~」

手を振る智は立ち上がり、鞄を手に取った。

「帰ろう、翔くん」

「おぉ…」

波がひいていくように胸に広がっていた何かが
ひいていく。

「ねぇ、智」

「うん?」

見上げるその顔。

俺は智に近づいて、顎にそっと指をかける。

「目、閉じて…」

「え?なんで…」

なんでこんなことを言ってるんだろう。

大人しく目を閉じる智。

その唇に自分の唇を重ねた。

チュッと音をさせて唇を離すと智は目を閉じたまま。

「智…」

「なぁに?もう、目、開けていいの?」

「目、開けて」

つぶらな瞳が俺を見てる。

「なぁに?」

「帰ろう」

「う、うん…」

智の手をとってひいた。

キスをした。

智に。


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