
僕は君を連れてゆく
第50章 こんなにも
潤に番(ツガイ)がいると知ったのは
その番の彼が関西へ転勤することが決まったとき。
会わせたい人がいる、と紹介されたんだ。
しばらく会えなくなると。
普段は無駄に胸元を開けて着るいつものシャツ。
それが、首までしっかりボタンを止めて彼と並んで歩いてきたときに分かった。
俺には見せることのない甘えた表情を見せる潤。
首にしきりに手をやる潤をからかった。
潤くんをお願いします、と頭を下げた彼。
年下のようだけど潤を見つめる瞳は優しくて
潤に触れる手は温かくて。
潤の幸せを、彼の幸せを心から願い、嬉しかった。
でも、同時に羨ましく思い
俺だけ、俺だけが一人ぼっちになったような
そんな感覚になった。
夕飯は一人なんだと出前でもとろうかと携帯を
持ったら電話が鳴った。
「はい」
出版社からの電話で。
四月でそこの雑誌のコラムを書いて一年になるから記念に何かやらないですか?という内容でどこかで打ち合わせを兼ねて食事はどうですか?というものだった。
出前を取ろうとしていたくらいだからと、返事をして着替えた。
携帯、財布を持って部屋を出ようとした。
段ボールはまた、しまいそびれた。
俺の担当の岡田くんとはかなりの付き合いになる。
歳も俺より一つ上で兄貴のような存在だ。
「悪いね、急に」
「それより、腹減っちゃって…」
連れてこられたのは最近出来たという立ち飲み屋だった。
「ここ、人気なんだよ。雑誌でも特集組まれてて」
「へぇ~」
店内はさほど広くないが、天井が高くて開放的。
「ここをプロデュースしてる会社、
聞いたことない?STORM-OSっていうの」
立ち飲みなのに店内を流れる音楽はジャズだ。
「ストーム…そこらへんあんまりくわしくなくて」
