
僕は君を連れてゆく
第37章 背中合わせ
「綺麗だよな。和也くん。凄く綺麗だ。」
はぁ?
なに言ってる。
「でも、いつも泣きそうだった。和也くんは、お前が、松本が思ってる以上に松本のこと、好きなんだよ。」
「それで?それで可哀想で手、出したのかよ?」
「……。
お前にとってパートナーってなんだよ?
ただの同居人?違うだろ?
可哀想にしたのは、誰だ?泣かせたのは誰だ?
全部、お前だろ?
初めて二宮さんに会ったとき、お前のこと、本当に好きなんだなって思った。
お前に褒められてさ、顔赤くしてさ。
いいなぁって思った。
でも、次に会ったときはすごく、辛そうだった。
だけど、強いよ。二宮さんは。
俺には出来ない…
出来たら違ったのかなぁ…
小せぇ、プライドだよ。
向こうがシタイから付き合ってやってんだ、くらいに思ってたら求められなくなった。
求められなくなったら、話もしなくなったよ…
でも、二宮さんは…違っただろ?
お前を待ってただろ?
抱いてくれって、お前に言っただろ?」
櫻井は唇を噛み締めて肩を震わせた。
和也に己を重ねて。
「…俺?俺が悪いのかよ?俺だって…
子供がいらないわけじゃない…」
「本当に子供が欲しいと思って、言ってると思うのか?
俺だって、お前と同じ仕事してんだ。
お前の気持ちわかるよ。疲れるよ。子供、子供言われたら、嫌になってくるのだって。お前、二宮さんのこと、アイツ、アイツって言うけどさ…
名前で呼んでやれよ。」
疲れてるから、ろくに話も聞いてない。
忙しいから、一緒に眠ることが出来ない。
「疲れてても、忙しくても名前で呼ぶことは出来るんじゃないのか?
面倒で、適当に機嫌とってるんだろ?
そういうの、相手には伝わるぞ…」
