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僕は君を連れてゆく

第35章 空の色


カーナビの到着予定時刻よりも15分程、早くついた。

「海だ…」

まだ、海水浴シーズンではないので人はまばら。

「たまにはいいだろ?」

そう言えば、昔、釣りをやってたって話してくれたことがあったな。

「今は…釣りはしないの?」

海からの風は大野さんの茶色の髪を揺らしていて。

「そうだな…ニノが一緒にやってくれるなら行こうかな?」

「俺、やだよ…酔うし…」

二人で同じ趣味とか見つけられた方がこれから先もうまくいくのだろうか。

「だよな…」

携帯灰皿に吸い殻をしまう。

「タバコもやめなきゃな~」

大野さんは俺と一緒に住むようになって家の中で
タバコは吸わない。

無理してるんじゃないかなって俺は思ってて…

「なんで?やめなくてもいいじゃん!」

そう言うと大野さんはいつも目尻を下げて笑うだけ。

「少し、歩こうか?」

波打ち際を二人で歩く。

手を繋ぎたいな…

でも、昼間だし。
我慢しなきゃ…

「行くか…」

少しだけ、本当に少しだけ、しか歩いてない。

「え?もう?」

「チェックインの時間になるしな…」

ぐっと俺に近づいて肩を抱かれた。

「手、繋ぎてぇもん。」

もん。って…

手を繋ぎたいって…

俺だって…

「早く、帰ろ…」

俺も大野さんの肩に腕を回して、二人でじゃれながら車まできた。

スニーカーやジーンズの裾は砂まみれになっていて「櫻井に怒られちまう!」って言いながらそのまま乗り込む大野さんを慌てて下ろして、パンパンはたいた。

その間も終始大野さんは、くすぐったいと体をネジネジしていて、面白かった。

お返しにと(つまりは仕返し)俺の体もバンバンはたかれて…

二人で涙が出る程笑った。

「あー、おもしれぇ!行くぞ!」

ホテルに向けて出発した。






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