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僕は君を連れてゆく

第15章 会いたい


「次で降りるよ。」

バスに乗って10分弱。
お葬式の会場のそばのバス停で降りた。

降りた瞬間、暑さが体を包んだ。

「暑いな…」

大野さんは眉間にシワを寄せて空を見上げた。

「ねぇ。」

「ん?」

大野さんが歩き出したのでついていく。

「俺は?変わった?」

「どう思う?」

「…わかんない。」

「そっか。すぐ着くよ。」


大野さんは答えてはくれなかった。

少し歩くと、電信柱に[松本家]と書かれた葬儀場を知らせる看板がかかっているのが目に入った。


「にの?」

「………」

足が動かない。

声もでない。

考えてみれば、俺は先生のことをあまりよく知らない。
俺はこんなところに来てもいいのか…

「大丈夫だよ。行こう。」

大野さんの手が肩に触れてそっと押してくれた。
右足が動いたら、そのまま歩けた。

黒い服に身を包んだ大人がたくさんいる。

受付を済ませ、辺りを見渡した。

中には同級生や先輩。
きっと後輩で先生の授業を受けていたであろう過去の生徒たち。
そして、同じ先生たちもいた。
大野さんは先生たちに頭を下げて挨拶をしている。

中には祭壇があった。
祭壇の先生はあの頃と、同じ顔に見えた。


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