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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

『愛留が頑張りたいって言ってるんだ。
何も無理に…反対することないんじゃないのか』


『……パパ』



新聞をたたんだ父が、物静かに口を開いた。




『そもそも、受かる見込みもない進路希望を
出してるわけじゃないんだろう?』


『う…うん。まぁ』


『娘一人を…4年や6年大学にやったって
何の問題もない。
公立も私立も、気にせずに
まずは受けられるところ…受けたいところ
受けてみても良いんじゃないか?』



『…パパ…いいのっ?』



『……ママも、良いだろう?
愛留の人生なんだから……』



『~言っても言ってもわからない子なんて
知らないわ。好きになさい…』




『…ママ。ありがとう…っ』



『~…行ってくる。
愛留……お前も早く支度しなさい。
遅刻するぞ。駅まで送るから』



『う…うんっ…はいっ』


出勤する父の車で一緒に家を出た。


母が小言を言わないように
私を逃がしたかのようにもみえた父。



『パパ…ありがとう。嬉しかった』


初めて伝えたワガママを
初めて両親が受け入れ、後押ししてくれた事が

心から嬉しくて
無表情にも見える父にお礼を言った。


『アイルは…獣医になるのか?』


見ようによっては照れてるようにも見える父は
少し話を反らしてきた。


『うん…。おじいちゃんみたいに…なりたいの』


『そうか…。三者面談…父さん
都合つけて行くから…』


驚きの嵐だった。


色んなことが初めて過ぎて。


『えっ…?…ぅん、いいよ。パパ忙しいし。
先生と話したこと、ちゃんと二人に報告する。
ありがとう…本当に。もう…十分』


『そうか…』



短い時間だったけど
本当に嬉しかったのを今でも良く覚えている。


そして
本腰を入れて頑張ろう!
そう思った日だった。


ワガママを聞いてくれた二人を失望させたくない


そして何より

私は私の夢を叶えよう。

絶対に。





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