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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

男の子は……男性は、おそろしい生物…

この日、私の脳には
そんな記憶が刻みつけられた。

十数分…数十分…
どれくらいの時間だったのだろう?

私には何十時間にも感じられた
おそろしい出来事。



気がつくと私は、家の玄関に倒れ込んでいた。


一人、家にいる…と言うことは
誰にも会わず、警察にも捕まらずに辿り着けた
ということ。

この時の私にとっては幸運だったのだろう。

そして、そんな時間であっても
家に誰もいないこと。

多忙な両親は帰宅したとしても深夜だ。
会わずに済む。
知られずに済む。




ふと…ようやくというように…
身体中に痛みを感じる。

擦り傷だらけの腕や脚…
いつの間に…。

ちっともわからなかった。




お気に入りだったワンピースは
砂や土でまみれて所々ほつれ、破れて
汚れていた……

そう…汚れて…

私のように……汚れて…。








ゾワっと…背筋が凍るような感覚…


先程起こったことが、くっきりとよみがえる。


〃いやだ…っ〃



バタバタっ…

風呂場へと走り、洗面所の大きな鏡の前でピタリ

……。


私は驚愕した。



『っっひぃっ…いやっっ!!
…ギャアァアアっ……!!!』



鏡に映る自分の姿……


ボサボサの私の黒い髪…

汚れた服…


それよりも……なによりも…





『いやっっ…いやっ……っ』


先程、自分のしたこと…
その現実を目の当たりにする。



私の右手…

そして鏡に映る私の顔には


真っ赤な血がベットリとついていた。





私は夢中で手を洗った。


着ていた服を脱ぎ捨て、ゴミ箱に入れる。


風呂場に駆け込んで夢中で顔を、体を洗った。


〃コワイ…っ
キタナイ…キタナイ…キタナイっ…!
…ケガラワシイ……キタナイ…っ!!〃




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