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第30章 それぞれの、生きる場所…

『シュン~!……ちょっとおいで?』

コートを必死に走るシュンを呼び止めて
ひとまずスタッフに試合を託す


『はい…っ』

シュンが元気に返事をしてかけてくる


『シュン…。
今日はもうコート出て?ストレッチやろう』


『え…?』


ベンチに連れてきたシュンと向き合う


……気になってはいたが


気のせいじゃ……なさそうだ


ベンチの隅にアイルが居たことを
すっかり忘れてるがオレは・・・


『シュン…今日お母さん来てるか?』


『……あとから迎えに来ます
先生?・・・オレ』


シュンが驚いたようにオレを見る


『先生から、後でお話があるから
お母さんが来たら~……』


『先生っ!…おれ
たくさん練習しないと試合にでれないよっ…』


『シュン…。先生わかってるぞ…?
足・・・痛いだろ?』


『い…いたくないよ!…ちっとも
先生…おれ本当にいたくないよ!?』


『~シュンは今日は柔軟やって終わり
お母さんに言って早く病院に……』


『先生!なんでだよ!?おれ……大丈夫っ』




『シュン?
自分で大丈夫って思っててもな?

・・・少しのケガくらいって
思っててもな?』





この子の気持ちは……よくわかる

だけどな・・・



『シュン……』










『っっう…うるせえっ…!

うるせえよ…っ!!』






まだ声変わりもしてない

幼い声が

悲しそうに体育館に響いた




シーン……









『…シュン?・・・何だ今の…』


『~~っ…』


泣くのを堪えて
悔しそうにシュンが下を向く

体育館がピタリと静かになった








『シュン!!……その態度は何だ!?』



力が・・・入ってしまう



ザワザワっ…



保護者が…騒ぐ



あぁ…マズイ。



よりによって先輩の不在の時に


生徒のアクシデントはおろか

保護者からクレームまで出したら…



ザワザワ……。




先輩なら……どうするだろうか



オレの・・・やるべきことは…



……。



…………。



この場を受け持っているのはオレだ



……動揺してるワケにいかない。



『っく……ぅっ…~~』

シュンは下を向いて
唇を噛み締めて・・・涙をこらえている




『…シュンくん?』



『?!』

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