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第11章 明日への勇気

『リョウ…いやだ…
リョウキがあやまっちゃ
…いやだよぉ』


『守ってやれなくて…ごめんな…っ…』



『いやだぁ…っ リョウキ…あやまら…ないで』


『ごめんな…アイル・・・ごめん』



『りょぉきっ…あやまら…ないで…
泣かないでよぉ…』


『…グスっ・・・~泣いてねぇよ…っ』



お互いの気持ちは通じている

それを確かめるように強く…強く抱き合った


少し落ち着いてからアイルをはなして
ベッドに寝かせる


『リョウキ?…』

『うん?』


『手…』


オレの右ポケットを見つめてアイルが問う



『なんで‥ずっとポケットに入れてるの?』

『あ、そーだな。ん~なんだ?クセでつい…』



『うそ。…あたし 知ってるの…』


あの車の窓を
メチャクチャに割った時に切れた右手

アイルに見せるのは気が引けた
アイルに…余計な事を気にかけさせたくない

…無意識にポケットに入れていた


『……』

アイルが少し…弱々しく、オレの右手
ポケットに両手をのばしてくる


『看護師さん…それから
刑事さんにきいたの…』


アイルが病室の奥に掛かった
バンカーに視線を向ける


…あれは?


恐らく返却されたソウタさんの白衣…
オレのシャツ
アイルを運ぶ時に着せた…

白衣についてる血は…大方オレの



んなモン置くんじゃねーよ
それもアイルのそばに…


なんて思ってる隙に…
アイルがオレの腕をつかむ

促されるように右手をポケットから出す
…包帯をグルグルに巻いた右手を

『…~』

『…』

アイルがオレの右手を
両手で包むようにしてさすり、涙ぐむ


『~なんも…大したことないから』

『リョウキ…。この手が…この手で
あたしを助けてくれたんだよね…っ…』


『…アイル』



『いたかったね…
いたかったねぇっ りょぉきっ…っ

ぅっ…ごめんねっ…ごめんね…っっ
リョウキにこんな痛いさせて…
ごめんねっ…っ』



『…ちっとも‥痛くないから
やめろってアイル‥』



痛くなんかねーよ・・・

無傷でアイルを助けられなかった

アイル…お前の方がずっと
身体も…心も…

オレの何倍も何倍も
痛いに決まってるのに…

オレのために…泣いたりしないでくれ


左手でアイルの頬に触れて涙を拭う

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