
きみがすき
第31章 *はち*
…
相「結構濡れちゃったね。ごめんね?」
……
きっと全然 ごめんと思ってはいない。
いや、ちょっとくらい思ってるかもだけど。
て、ゆーよりも…
「外…」
じゃん。
相「ふふ。そうだね(笑)
ほら。拭いてあげるから目 閉じて?」
ぽた。
と落ちた滴。
頬っぺただけかと思ってたら、思いの外 前髪の方まで濡れてたらしい。
……
いやいや……俺悪くないし。
じっと見詰め…間違った、悪戯にまんまとひっかかったのが悔しくて(あと照れ隠し)ジロッと睨んで目を閉じない俺に、やっぱり相葉ちゃんは楽しそうに笑って
相「水。目に入っちゃうよ?」
…相葉ちゃんがやったくせに。
ペロン。と自分のTシャツを捲って、俺の顔に付いた水を拭き取っていく。
「…」
ちらっとじゃなく、がっつり。見てしまった相葉ちゃんのお腹。
…
……くそぉ
俺より引き締まってる。
…
なんて…ライバル心を無理矢理燃やしたり…
…
……してみたけど…
相「はい。おーわり♪」
「…ねぇ…」
相「ん?」
「俺にも…」
ぎゅっ。と意識的に掴んだ 相葉ちゃんのTシャツ。
相「大ちゃん?どうし…」
「相葉ちゃんの唇 食べさせろ」
相「へ?…なっ…」
返事なんて待ってやらずに、ぐい。と相葉ちゃん体を引き寄せる。
…あ
唇に触れる寸前。
俺は初めて…
相葉ちゃんの顔が赤くなるのを見た。
「……」
相「……」
舌を…入れる訳でもなく
だからといって、唇を啄むのでもなく
ただ…お互いの唇同士があたっている
そんなキス。
時間にしたら、きっと数秒くらい。
…
……
きっと今日はずっと緊張してたんだ。
相葉ちゃんと、ちゃんと話をしなきゃ。って
なのに、相葉ちゃんがキスするから
緊張の糸か何かが、プツッと切れたんだよ。
ねぇ相葉ちゃん
俺は大丈夫。
何を言われても大丈夫だよ。
だから…
……ポチャン…
俺の背後で、魚が跳ねた音がした。
それを合図に
ゆっくりと、Tシャツを握っていた手を緩め唇を離す。
相「……」
そして俺は、しっかりと少しだけ色素の薄い瞳を見て
「いただき。」
相「…大ちゃん…」
「ふふ。驚いた?
さっきのお返しだよ?」
だから俺は笑ってなきゃね。
