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第2章 Warp A×N
「いただきす。」
「召し上がれ。」
ハンバーグに箸を入れる顔は、
本当に子供そのもので。
また、吹き出しそうになるのを堪える。
「ん、美味しい。」
「ほんと?よかった。」
「…やっぱり、雅紀の料理は美味しいね。」
また、和也は笑った。
でもさっきと違うのは、
今にも泣き出しそうな顔をしてるってこと。
「え!ごめん!美味しくなかった?
無理して食べなくていいよ!」
「違うよ!美味しいから!すごく。」
じゃあ何でそんな顔をしてるの?
やっぱり作って待ってた、なんて
気持ち悪かった?
また変な風に考える。
和也の泣き顔を見ると、思い出す。
和也が家を飛び出したあの日のこと。
追いかけられなかった自分のこと。
あの日…。
俺は残業でかなり遅くなっていた。
それも1日2日の話ではなくて、
もう2週間近くそんな日が続いてた。
あの日までは、
「遅くまで仕事大変だね。」
「お疲れ様。」
そうやって迎えてくれてたのに、
その日は出迎えがなかった。
家に帰ったのがかなり遅かったからかと
思って、静かにリビングへ向かった。
床に座り込む和也の姿が見えた。
泣いてたんだ、和也。
声を殺してじっと丸まって。
「和也?」
声を掛けると、
「あ、おかえり!
ごめんね、気が付かなくて。」
無理に作った笑顔を向けられた。
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