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影に抱かれて

第15章 その、白い手

「ジュールが、僕の兄上……?」

濃い疲労の色を浮かべるジャンの顔に、強い苦悩の表情が浮かぶ。

「お前には全て話しておくべきだったと……そのようにご夫妻にお願いするべきだったと、今は悔いておる……」

なんという恐ろしいことだろう……!

男性であるジュールを愛した自分。そしてそのジュールとは血の結びつきまで。

これほどの禁忌があるだろうか……

「こんなこと……こんなことを知ったらジュールが! ジュールがどんなに傷付くか……。なぜ今まで教えてくれなかったのですか!」

リュヌが自分以外の誰かを罵ったのは生まれて初めてだった。

「すまん……しかしリュヌ、これから話すことを落ち着いて聞くんじゃ。お前には今以上の苦悩が訪れるだろう。そしてその上で、わしの決心を聞いて欲しい」

知らぬうちに涙が頬を伝うリュヌに、ジャンは静かに語りだした。

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