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修練の鏡と精霊の大地

第13章 橋の上の攻防

 前にいる奈美が、一番大変だった。


 目に見えない橋を、一歩一歩手探りで進まなければならないのだ。


 しかも、はるか真下には地上が見える。


 橋が見えている時は、常に橋の真ん中に立っていたが、目に見えなくなった今では、橋のどの位置にいるのかがわからない。


 どちらかの端に、寄りすぎているのかもしれないのだ。


「どうして私が前なのよ……」


 奈美は三人の中で、一番背が低い。


 橋が見えている時は、普通に歩いて渡れるほどの、幅のある橋に感じていた。


 正直、一歩も動きたくないのだ。


 でも、自分が止まれば後ろがすぐ来てしまう。


 勇樹は勇樹で、前に合わせて進まなければ、足手まといになると思っていた。


 落下防止のためのツルで三人繋いだのはよかったが、一番遅い自分が後ろにいるため、すぐにツルがピンと張ってしまう。


 球也の腰に引っ張られた感が伝わると、四つん這いのまま、振り向いてしまう。


 その目が「早く来いノロマ」と言っているように感じていた。


 透明な橋の上、四つん這いになったまま三人が進む。


 太陽がかなり上がってきた。


 かなり暑い。



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