
続・あなたの色に染められて
第10章 マタニティ・ライフ
『サクラちゃんわかった?』
『なんとか…』
新人の桜井さん…通称サクラちゃんは薄茶色い瞳にキミよりも透き通る真っ白な肌
この街にある米軍基地関係の職に就く青い目をしたお父さんを持つハーフの女の子
『大丈夫だよ。俺がバッチリフォローしてあげるから。』
英語と日本語でみっちりと書かれたノートを目で追いながら自信なさげにコクりと頷くさまは 事務所に入るまでとはまるで別人
『風間さんよろしくお願いします。』
『任せとけって。』
この蔵で働いて初めて出来た直属の部下に恥を掻かせるボクじゃない。
『頑張って!サクラちゃん。』
『 I’ll get it done!でも…大丈夫かなぁ。』
『大丈夫だよ。璃子も出来たんだから。』
『あ なんかのその言い方ヒドイ。』
海外営業部の愛らしい華が2輪、片方のブロンドは仲睦まじき二人を見てクスクスと笑い、もう片方のキミはダンナさまの発言に唇を尖らせて
『明日はみんなでフォローするから。』
『よろしくお願いします。』
和やかに時を過ごしていた。
『よし、じゃあ璃子の特製弁当でも食うか?』
『賛成!』
四人で仲良くお重をつつき始める。
『この唐揚げすげぇうまい。』
手作りの弁当なんてどのぐらいぶりだろう
『ハイ京介さん、おにぎりどうぞ。』
『サンキュ。』
『この卵焼きは何が入ってるんですか?』
『それはしらすとおネギ。』
気の利くキミはいつお昼を食べられるか解らないからと休日出勤してるボクたちの分まで用意してくれた。
『京介さん毎日こんな旨いの食ってるんですか?』
『フン いいだろ。』
キミが作ったのだから絶対に美味しいとは思っていたけど
『どう?お口に合う?』
『すごく美味しい。』
『うん、旨いよ。』
それはキミの笑顔と同様ボクの心にグッと染みる久しぶりの家庭の味で
『今度は璃子ちゃんのカレーが食べたいなぁ。』
『はぁ?風間…テメェ…』
『イヤ…俺、カレー好きなんだけどどうも思ってる味にならなくて。』
ダンナさまに睨まれるとは思ってた。でも、この味を知ってしまったら頼まずにはいられなかったんだけど…
『風間さん、カレーなら私が作ってきますよ。』
『え?』
『私カレーだけは得意なんです!』
おにぎり片手に目をキラリと光らせる彼女に何かを感じたのはボクだけなのか…
