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第10章 拉致

…リツ読んでくれたかな。読んでくれてる筈。

部屋には時計も無く時間が判らなかった。いつもの癖で携帯で時間を見ようとした。

…あっ…そうだ。入り口でバッグ渡したんだっけ。

携帯の持ち込みは禁止で、女の子達は全員バッグを部屋の入り口で預けていた。あたしはウーロン茶でお菓子を流し込んだ。少し食べれば、お腹もならないし恥ずかしい想いはしないから。

…それにしてもリツが遅い。

「ヒロシさん。今何時だか判りますか?」

ヒロシは自分の時計をチラリと見て笑った。

「9時20分だよ。」

…そっか…ここに来てから10分ぐらいしか経って無いのか。

「あの…友人が来ないので、携帯で連絡したいんですけど。」

何だか身体がポカポカしてくるような気がした。

「ゴメンね。ここでは携帯使えないんだ。だけど僕と一緒に入り口でなら良いよ。」

…あ…れ?

「これ…お酒入ってま…す?」

…頭がボーっとしてきた。

怠い頭で周りを見ると、女の子達はうつらうつらと居眠りをしているようだった。

「ううん。君は未成年だろ?お酒なんて入ってないよ。」

あたしは椅子から立ち上がろうとすると、眩暈がした。

「ごめん…なさい。」

よろけるあたしをヒロシは支えた。

「大丈夫?」

「なんか具合が…悪いの…。」

入り口に向かってヒロシと一緒に歩いたが、足の下の真っ赤な絨毯がズーム・アップしたりアウトしたりと落ち着かなかった。

「君の鞄どれ?」

ヒロシはあたしの身体を支えながら聞いた。眠気が雪の様に振って来て、拭っても拭っても、意識を遮断していく。

「あの…黒いショルダー…バッグ。」

ヒロシが取ってくれたあたしのバッグの中から携帯を取り出した。

「友達って可愛い子?」

「え…ええ。」

…目が霞んできた。

「あれ…なん…か力が入ら…ない」

番号をタッチしようとすると携帯が手から滑り落ちた。

…あっ…やっぱり変だ。

ヒロシの笑い声が遠くで聞こえる様な気がした

…ことまでは、あたしは覚えていた。

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