
大切な人へ
第1章 はじまり
「まただね~ 笑」
休み時間になって声をかけてくれたのは
1年でも同じクラスだった
渡辺紗羅(わたなべさら)
『笑い事じゃないよぉ!1学期は体育祭あるから
去年も大変だったんだよ? 涙』
そんな私の横でふわふわ笑う彼女は
すごくいい子で 入学してすぐ仲良くなった
可愛い系の美人なのにそれを
鼻にかけないところも好き
全体的に色素が薄く小柄で
羨ましいところだらけだ
『紗羅は誰に入れたの?』
「美優だよ?」
やめてよ~!っと言ってる私に笑う
紗羅の高い声が響き 隣の席からも
視線が注がれてる気がした
帰りのHRが終わり
手話部の幽霊部員の紗羅と一緒に
下まで帰ろうとしていた時__
「藍野さん…ちょっといい?」
教室のドアを出たらすぐに声をかけられた
知らない男の子
この感じ…
今さっきまで紗羅と笑っていたのに
顔が強ばる
「あっ…じゃ…私先いくね?また明日!」
気を使ってくれる紗羅
本当は 行かないでって言いたい…
でも 私を見つめる彼を拒否もできない…
