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異彩ノ雫

第38章  十ノ月 ④




駅から続く道を
右に折れた
突き当たりにある小さな映画館

薄暗いロビー
軋む床

けれど
シートは極上の座り心地で
コーラを片手に
膝の上にはポップコーン
左の席には…そう、いつも君がいた

週末ごとに紡いだ時間
左肩のぬくもりに
スクリーンの輝きよりも
ときめいた


開くことのないドアにもたれ
目を瞑れば
黄昏がやさしく肩を抱く
時が、息をひそめて過ぎてゆく…







【帰郷】


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