天然執事はいかがです?
第12章 アルトの過去
『有斗って話ずらいよな』
『何考えてんのかわかんねぇ』
新しい学校のクラスメイト達からは裏でそう言われ、担任もまた、俺を遠ざけた。
『ほんっと…あの子って扱いずらいわねー……』
『せんせーあの子ってー?』
クラスの女子が無邪気に訊いた。
『神木くんよ…神木 有斗!!』
『あの子あたしもキラーイ!!』
キャッキャッと笑う声に、担任も笑っていたのをよく覚えている。
俺は教室の薄汚れたドアに隠れて訊いていた。
それでも不登校にはならなかった。
藤原さんはたまにしか帰ってこないから、奥さんにまで心配はかけたくなかった。
「有斗くん、もうご飯要らないの?」
「はい………」
「あら…そう?じゃあお風呂沸いてるから入ってらっしゃい?」
優しい優しい藤原さんの奥さん。
でも甘えられない。
「僕は…要らない子なんだ……」
一人幼い俺はポツリと呟いた。
その声は細々と風呂場に水音と共に響いた。
誰か僕を愛して……
誰か僕に愛し方を教えて……
お願い―――…………
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