season
第13章 ピンク
桜の花びらが風に舞う
今日は少し風が強くて、アスファルトの上で渦を巻いてる花びらから目が離せない。
「にのー。
なに見てんの?」
しゃがんでた俺の肩に乗っかるように体重をかけて大好きな声が降ってきた。
「花びら。」
風が凪ぐ。
そこにはただの散った花びらが落ちてるだけ。
「地面の?
上を見ろよー。」
相葉くんの声につられて顔を上げると少し先にある桜の木は風で花びらが落ちるけど、まだ満開でないものの咲き誇る綺麗なピンクのかたまり。
「すっげーキレー。」
「ほんとだ。」
相葉くんがそのまま俺の背中にピタリと張り付いて、さっきお腹のあたりに回された腕をほんのちょっと躊躇したけど触った。
もうすぐ再開される撮影までの数分間。
ドキドキしてるといえばしてる。
落ち着く…っていえば最高に落ち着く。
この人に伝えたいのか、伝えたくないのか、どうするのがいいのかもわからない。
長い間抱えた想いは今も色あせることなく、
この胸にある。
今年は言ってみようかな。
なんて。
去年もその前も思ったはず。
結局言えずにいるからまた今年も友達のまま、相変わらずこうして、この人を絶妙なポジションで見ている訳で。
でも…
今日…もし夜会えたら…
言ってみようかな。
すきだよ
って。
笑うかな。
ありがとうとか言われたりして。
また風が吹いて足元にくるくると回る桜の花びらたち。
それを指差して、
「ね、これ可愛くない?
さっきから目を奪われててさ。」
「ああ、ほんとだ。可愛い。
見ちゃうね。」
同意してくれて嬉しくなった。
毎年綺麗に咲く桜に勇気をもらおうかな。
もしダメでもこの気持ちはなくならないしな。
来年も好きだし。
花びらは散れども毎年きちんと花を咲かすのと同じ。
俺の想いも少しへたっても毎年、変わらず、
あなたへあります。
撮影再開の声がかかる。
立ち上がる前に耳元で言われた言葉。
「にの、今日夜早く終わったら一緒にご飯食べない?」
どうやって誘おうかと思ってたから嬉しくて顔がにやけてしまう。
「うん。
終わったら連絡するー。」
「了解。」
離れる体を寂しく思うのは…
俺だけじゃないよね?
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