
アップルパイと君の隣で
第14章 アップルパイと
〔佳奈サイド〕
花火の光に照らされた先輩があまりにも綺麗だった。
おかげでまともに花火なんて見ていられなかったけど全く後悔しなかった。
先輩と繋いだ手がずっと離れなければいい。
ずっとこのままで居られれば良いのに。
だなんて乙女チックな事を考えてしまう。
花火が終わると先輩は気恥ずかしそうに手を離してしまった。
それが名残惜しく思うだなんて、実はロマンチストだったのかもしれない。
先輩と一緒にいると今まで知らなかった自分が造られていくみたいだった。
「佳奈」
そんな事を思いながら帰り道を歩いていると隣の声が私の名前を呼ぶ。
心地のいい。大好きな声だった。
「何ですか?」
「月が綺麗ね」
先輩が空を見上げてぽつりと呟く。
そんな先輩の言葉に空を見上げると今日は本当に綺麗な満月だった。
綺麗ですねと返そうとして先輩を見ると抑えられない思いが溢れてくる。
