トクベツ、な想い
第14章 14
「あ、そういえばみゆちゃんに言われたこと潤に言ってないけど…知ってるんかな…」
出勤途中に思っていると会社の入口に、昨日傘を貸した子が立っていた
俺に気付くとたたたっと寄って
「あの、昨日はありがとうございました…これ」
「あ、うん…傘立てに入れといてくれて良かったのに」
「直接お礼が言いたくて」
「はは、傘ぐらいで…良かったのに」
ありがとうと傘を受け取ってすぐ傘立てに刺した
会社に入って、エレベーターに入って…
その子はずっと俺の後をついてきていた
「…何階?」
同じ会社なんだしそりゃそうかと、6階を押した後に聞いてみると同じ階だと言われた
「え…何部?」
「…EA部です」
「…もしかして最近入った?」
「あ、はい」
えー…みゆちゃんが言ってたのってこの子か?
でも男を狙ってるようには…寧ろ男が狙うような
聞いた内容だけで勝手にドラマで見るような"魔性の女"をイメージしてたんだけど…だいぶ違くて頭が混乱した
そうこうしている内に6階でエレベーターの扉が開く
「本当にありがとうございました、櫻井さん」
「…いえ」
頭を下げてスタスタEA部に向かっていった
俺も降りたけど、苗字を知ってることに少し驚いた
みゆちゃんが言ってたこともあながち間違いじゃないのかも…
そう思って企画部に急いだ
「聞きたいんだけどさ…」
「はい」
来ていたみゆちゃんに駆け寄ると疑問をぶつけた
「昨日言ってた子ってさ
セミロングくらいの髪をこうふわふわって巻いてて
いかにも可愛いって顔の、清楚そうな雰囲気の子?」
容姿を思い出しながら身ぶり手振りで伝えると
「…はい、たぶんその子だと思います」
「やっぱり…」
「え、何かあったんですか?」
「いや…昨日知らないで傘貸してさ…」
「えぇ!?」
昨日注意されたのに、その後もう会ってたなんて驚きですよねー…
でも顔知らなかったわけだし…
「それで?」
「いや、朝…てかさっき返してもらって…それだけ」
「危ないですよ」
「まぁ苗字知ってるのはちょっとビビったけど、そんな心配しなくても良さそうじゃん?」
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