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犬猿の仲良し

第14章 考える男

俺はふ、と時計を見た。
6時10分…。
そんなに時間が経ったのか。
俺は無気力だった。
今までの付き合いに終止符を打ったのだから。
こんなに跡形も無くなるものなのか。
学校行きたくねぇよ。
あいつ、隣じゃん。
席替えねぇかな、今日。
ねーよな。
俺は立ち上がり、窓を閉めた。
窓の向こうの健太の部屋は見えなかった。
カーテンが閉められていた。
そりゃそーだ。

自分で帰れって言っといて自分が一番後悔するなんてな。
は、と自分を嘲笑う。

…飯作るか。
何かをしていないと涙が溢れてきそうで、これ以上自分が醜くなるのが怖くて。
俺は窓からゆっくりと離れ、制服に着替えて部屋から出た。

ー6時50分

璃「ごちそうさまでした。」

カチャカチャ

食器を洗いながら時計をちらっと見た。
この時間は健太が迎えに来る時間だ。
いや、むしろとっくに過ぎている。
初めて健太が迎えに来ない日だった。

話したい。
話さなくても一緒に居られるだけで十分だ。
今まで俺は、健太は自分が居ないとだめなんだと思っていた。
本当にだめなのは俺の方だった。
つくづく最低だな、俺。
やべ、一回泣くと涙腺馬鹿になる。
戻れねーかな。
戻りてー。
でも今は戻り方が分からない。
思いつかない。

とりあえず学校行かないとな。
俺は蛇口の水を止めた。

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