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私の心の1番綺麗なところに

第5章 愛おしい時間





隆太。



木製の置き時計ね、使えなかったの。


私の使い方が変だったのかな。
初めから、使えなかったの。



でもね、あのとき買っててよかった。



だって、その置き時計を入れた袋があるから。







置き時計が無いいま、
それだけが



「あなたと私がいた」



という証拠になるから。




あの袋がなかったらね、
私たちが現実に「いた」という物がないの。




ちっちゃいよね。







でもね、時々ふと、


あなたと出会ったこと、話したことすべて
夢だったのかなと思う時がある。




そんなときは、あの袋を見るの。


そしたらそれはたしかに「ある」。



それは、あなたと私が

同じ時を過ごしたしるし。






こんなものでしか、

あなたと私を繋げられない。






だけど、








これがあるから
私は思い出としてあなたと繋がることができる。











これくらい、許してね。












あなたを忘れたくないだけなんだから。










たとえあなたが私を忘れていても。




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