けだもの系王子
第10章 涼、束縛系?
以前働いていたウェイターだ。
大学院生なのに、バイトに良く出て良く働く。
人当たりが良く、何をやらしてもスマートにこなす。
仕事も完璧にこなし、綺麗な顔の美形だから、女性客にもモテていた。
同じ大学のウェイトレスの女の子である、由宇ちゃんと結婚すると言って。
うちの店で二次会の予約までしていたのに、直前になって逃げられたらしい。
色々事情はあったようだけど。
最後に見た涼の表情が、忘れられない。
何だか、危うさを感じたんだ。
ずっと完璧だった人間が挫折を味わったら、一体どうなる?
嫌な予感がした。
胸騒ぎ。
つき動かされるように、俺は、走った。
『由宇ちゃん、パスタ、15番に持って行ってくれ!』
『もうっ、店長、あたし、唯夏ですっ』
何度も間違える事があった。
雰囲気が似てる、外見も少し。
まさか、な……。
行ってどうするんだ、唯夏ちゃんが涼に昔、憧れていたのは知ってるのに。
それでも。
『由宇ちゃんと一緒に暮らす予定のマンションです、ケーキ持って来て下さいね?』
俺は涼の住む家を知っている。
放っておけるわけないだろう……!
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