
不透明な男
第1章 記憶の無い男
重い瞼をこじ開ける。
だけど半分しか開かない。
その薄く開いた目が真っ先に捉えたのは、
白くてうっすら光るシーツ。
「ん…っ」
意に反して体がびくつく。
首筋が熱い。
「あ…ぁ…」
首が、うなじが、ゾクゾクする。
眉間に皺が寄るのがわかる。
背は熱い体温で覆われている。
俺の右半身は、背中から抱き寄せられるように少し起きる。
男の熱い手のひらは俺の胸を撫でる。
俺の目は虚ろなまま、口も半開きでだらしない吐息が漏れる。
うなじから唇を離した男が俺を覗き込む。
…虚ろな目は男を捉えた。
