
不透明な男
第3章 自覚の無い男
廊下に感じた気配はいつの間にか消えていた。
智「…っく、は、はぁ、はぁ…っ」
三度も熱を吐き出した俺は、荒い呼吸が止まらない。
松兄ぃも荒い呼吸をしながら俺の額にキスをする。
智「なんで…だめでしょ…」
兄「許せ。嫉妬でおかしくなりそうだったんだ。」
俺をギュッと抱き締める松兄ぃは震えていた。
あの後、腰が砕けて立てなくなっていた俺は、松兄ぃにお姫様抱っこでシャワールームに連行され、またもや屈辱的な姿勢を強いられ俺の全てを洗われた。
そして今、俺はピカピカだ。
松兄ぃが愛しそうに俺の髪にドライヤーをあてている。
俺は未だボーッとして能が働かない。
兄「智、大丈夫か?」
智「…なわけないでしょ」
兄「すまない。」
智「…激しすぎ」
兄「え?」
智「謝るくらいなら、あんなのしなきゃいいのに…」
兄「…行為に怒ってんじゃなくて、激しい事に対して怒ってるのか?」
智「どっちも!」
俺はプリプリしていた。
そんなに俺を抱きたけりゃ諦めて許すかもしれない。
ただその場合、普通は優しくするもんだろうと、考えれば考えるほど腹が立っていた。
智「…そんなにおれの事、好きなの?」
兄「ああ。好きすぎて気が狂いそうだ。」
智「!」
俺はストレートに言われ過ぎて驚いた。
きっと目がまんまるになっている。
兄「ふふ…そんな顔、俺以外に見せるなよな。」
智「な、なんで…」
兄「そんな顔してると襲われるぞ」
智「松兄ぃが言えた立場かよ…」
兄「ははっ、言えねぇな」
ったく笑い事じゃないよと俺は溜め息をつきながら、笑う松兄ぃを見ていた。
