
不透明な男
第1章 記憶の無い男
なんなんだこの声…
本当におれの口から出てるの?
だとしたら恥ずかしすぎる…
本当か確かめたくて、目を開けたい。
だけど重い瞼はびくともしない。
俺の背を這い回る男の手の感触から自分の状態を確認する。
その手は俺を直に触っている。
服の擦れた感覚は無い。
と、いうことは
おれは裸か…
頬はすべすべした生地に押し付けられている。
胸や腹も、頬と同様に心地よい生地に張り付けられている。
脱力した体は動かせそうにないが、拘束されている感じもない。
要するに、うつ伏せってことか…
「なぁ…目、開けてくれよ…」
男の息が耳にかかる。
「頼む、俺を見てくれ…」
泣きそうな声が聞こえる。
