不透明な男
第8章 序章
いつものカフェで翔を待つ。
何故か俺は少しそわそわしていた。
なんだこのウキウキ感。
おれ、翔と会うのが嬉しいのか…?
いやいや、そんなバカなと思っているうちに翔がやってくる。
翔「大野さん、お待たせしました。」
智「翔くん♪」
おや?何この♪…
やっぱりなんかウキウキしてるなおれ
智「今日は智くんって呼んでくれないんだ?」
翔「!」
途端に翔が赤くなった。
翔「や、あの、それは…こ、ここ病院ですし」
智「ふうん?」
翔「あの時はちょっと僕も調子に乗ってたと言いますか…」
智「そんなのいいのに。んじゃまたふたりっきりの時まで我慢するよ」
テーブルに伏せるようにしながら翔を上目使いで覗く。
翔は俺が下から覗き込むと弱いんだ。
真っ赤になるからすぐに分かる。
翔「あ…あ、あのえっとお、大野さん。」
智「ふふ、なに?」
翔「昨日はちゃんと寝られましたか…?」
俺はドキッとした。だって寝られないんだもん。
翔の心配そうな顔に胸がチクッとした。
智「あーうん。寝たよ?」
翔「本当に?」
智「うん」
翔「…そのわりには、お酒の匂いがしますけど?」
智「う」
バレた。
意外と鋭い。
簡単に罠に引っ掛かるわりに、こういう所はちゃんとしてるんだなと俺は感心していた。
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