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あなたの色に染められて

第40章 誰かのために


『どうしてこんなことになったんだ?』

ずっと黙っていた佑樹さんが口を開いた。

『忙しくて式の打ち合わせに全然一緒に行ってやれなくて…。お得意さんも絡むから 代わりにお袋が一緒に行ってくれてたんだけど…。』

『はぁ…おまえなぁ。』

…ゴン!

佑樹さんは持っていたジョッキをテーブルに乱暴に置くと

『仕事が大事なのはわかる。でも そういうのって二人でやるもんじゃねぇの?お袋さんと毎回一緒に打合せすればあの性格だよ?否応なしにも自分の気持ちを圧し殺すことぐらい安易に想像がつくだろ。』

俺たちはある意味驚いた。こういう話の時には まぁまぁ…なんて言いながら仲裁に入るタイプの佑樹さんが京介さんをグッと睨み付けちゃって

『おまえ甘えすぎなんだよ。』

捨て台詞まで吐いちゃって。

グビグビと一気にジョッキを空ける佑樹さんと空のジョッキを額に当てて口を尖らす京介さん。

そういえば佑樹さんは本気で璃子ちゃんを狙ってたことがあったっけ。

『…佑樹 。』

堪らず口を挟んだ長谷川さんも少し驚いてはいるようで

『で 京介はどうしたいの?…結婚式。』

対照的な二人を見ながらクスクスと笑い頬杖をつく長谷川さんはやっぱり俺らのリーダーで。

『そりゃ…全部やってやりたいよ。一生に一度のことだし…。』

『ねぇ 京介くん。そうやって璃子ちゃんに言った?』

その嫁さんの幸乃さんもまた俺たちの憧れで。

『言ったよ?やらなくていいのかって?でもアイツ譲らねぇんだもん。』

さて ここからは女子の出番。

『確かに璃子の気持ちもわかなくはないですね。璃子は友達も呼ばないから列席するのは親族ぐらいでしょ?あとは酒蔵の取引先の人とかお客さんとか…。それであの規模…。だったら 披露宴の間京介さんの横に座っていたいって気持ちなんだろうなぁ。』

そうだよな。璃子ちゃんはいっつも京介さんの傍にちょこんといて それが何よりも幸せそうで。

『でもさ 一生に一回だぜ?俺は璃子に普通の結婚式をさせてやりたいんだよ。』

…普通の…か…。

それは璃子ちゃんが幸せになるためのキーワード。

涙をたくさん流した分 京介さんがしてあげられる唯一のプレゼントなのかもしれない。

『じゃあさ…。』

一番下っばの俺が提案するのは生意気かもしれないけど 俺は二人のキューピットだからいいよね?

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