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あなたの色に染められて

第34章 キミを想う


『俺のことわかる?』

璃子ちゃんは俺の顔を見ながら不思議そうな顔をしていた。

…やっぱりわかんねぇかぁ…。

恋ってものはどうやら思ってたようには上手くいかないもので

『わかんない?俺は璃子ちゃんのこと知ってるのに。』

『…えっ!?』

さっきから考えたり驚いたり とにかくコロコロと表情を変えて

『昨日も会ったでしょ?』

『…昨日も…?』

ほら 今度は口まで開けて天井を見上げて。

その顔があまりに可愛いから俺の胸は高鳴って

『マジかぁ…へこむわぁ。扉の前に座る循環器担当の高円寺璃子ちゃん?』

目がキラッと光って 顔がパッと華やいだと思ったら

『あっ!信金さんだ!そう信金さん…信金さん!』

手をパチンと胸の前で叩いちゃって

『あぁ良かった。やっと わかった? いつもお世話になってます。○○信用金庫の森田京介です。』

でも すぐに表情はまた眉をハの字に曲げて

『あのぉ。どうして私の名前を知ってるんですか?』

俺が名前を知ってることをどうやって話したら良いか少し悩むと

『あのぉ。私もう そちらの支店の通帳持ってます。お給料の振り込みだってその通帳で…。』

困ったな…俺はやっぱり信金さんとしての扱いで

こんなに逢いたくて話してみたくてやっと二人きりになれたのに。

『春に入職した高円寺璃子ちゃんだよね。やっぱり面白い子だね。』

『はい…?』

違うよな…面白いじゃなくて…

『…可愛い。』

『…はぃ?』

初めてだと思う。女に“可愛い”なんて伝えたの

でも 間近で見る璃子ちゃんは触れたくなるほど透き通るような肌をしていて

瞳は吸い込まれそうなほど大きくて 唇は奪いたくなるほど艶やかで

きっと抱きしめたら壊れてしまうんじゃないかってほど小さくて。

じっと見つめる俺を不思議そうに首を傾げて見上げてた。


『あっ…美紀ちゃんの友達なんでしょ?』

コクりと頷くと

『俺は信金さんじゃなくて…京介。』

『…京介…さん?』

『そう。森田京介。仲良くして?璃子ちゃん。』

ちょうどその時 攻守交代。

俺は璃子ちゃんの頭にポンと手を置いてグラウンドに走った。

ヤバイ!ヤバイ!!すげぇ可愛いじゃん!!

自然と緩む頬を俺はグローブで隠しながら外野まで走った。

これはたぶん俺の初恋なのかもしれない。

こりゃ一人作戦会議だな。

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