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あなたの色に染められて

第33章 幸せのカタチ


『気に入らなかった?』

『…そ…そんなことないです…。』

ハートの形でもパールが散りばめられてるわけでもない飾り気もない一粒ダイヤのネックレス。

璃子はまだ「ありがとう」と口にしてくれない。

別にお礼をしてもらいたい訳ではないけれど 今までの流れからいったら 目を輝かせて何度もお礼を言ってくれたような気がして。

でも今回は璃子が気に入ろうが気に入るまいがそんなことどうでもよかった。

璃子は後ろに振り向き 申し訳なさそうに微笑んで俺に言葉を紡ぐ。

『あのね…なんか…その…。私にはこんな高価な物が似合う自信がなくて…。』

高価なものだから選んだ訳じゃないんだ。


…さて今夜は特別な夜。愛しい彼女に俺の気持ちを伝えようか…。


俺は璃子の目の前でダイヤのネックレスを揺らせて見せた。

『これは今のお前にプレゼントしたんじゃないんだ。』

首を傾げて揺れるネックレスを目で追う璃子に俺は今の想いを言葉に紡いだ。

『ダイヤモンドは「変わらぬ愛」。プラチナは「強い絆」っていう意味があるんだってな。』

璃子は口を少し開けたまま俺とネックレスを交互に見ていた。

『このネックレスは年を重ねても一生着けていられる一番シンプルでどの年代にも人気のデザインなんだって。』

璃子の首にネックレスを添えてフックを止めて

『…似合うじゃん…。』

まだ戸惑いながらダイヤのトップに指で触れる璃子にどうか想いが伝わりますように。

『今のお前も欲しいけど…俺は璃子の未来が欲しい。』

『…未来…。』

『年取って俺の横で小さいダイヤの…なんて格好つかねぇだろ?璃子はいつまでもいい女でいてくれ。』

『…京介…。』

『俺が一人前になったらおまえを迎えに行くから。』

『…うん…。』

璃子は涙を流しながらダイヤのトップに指を絡めて

『だから今日は仮な。』

璃子の額にキスを落とすと俺の首に腕を廻して何度も何度も「ありがとう」と俺に伝えてくれた。

『だから早く日本に帰ってこい。』

『…はい。』

プロポーズはまだ先だけど 微笑みながら涙を流す璃子に俺の気持ちは届いたかな。

『風呂入ろっか?』

『…え。』

『俺さぁ お預け喰らってんだよなぁ。誰かさんに取られてデザートも食ってねぇし。』

『…キャッ…。』

まだ恥ずかしがる璃子の体を抱きあげて風呂場へ向かった。

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